名古屋高等裁判所 昭和40年(ネ)624号 判決 1966年1月27日
主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人両名訴訟代理人は、当初、原判決を取消す、被控訴人らと訴外〓野光春間の名古屋地方裁判所昭和三九年(ヨ)第一八九〇号不動産仮差押申請事件につき、同裁判所が同年一二月二二日原判決添付目録記載の不動産持分九分の一(以下本件不動産という)に対してなした仮差押の執行は許さない。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする、との判決を求めたがその後、控訴人〓野春義訴訟代理人は、右控訴の趣旨を訂正し、原判決を取消す、被控訴人らは控訴人〓野春義に対し本件不動産の〓野光春の持分九分の一につき、名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年二月二五日受付第七六二七号をもつてなされた仮差押登記の抹消登記手続をなせ、との判決を求めた。
被控訴人ら訴訟代理人は、それぞれ訂正前の控訴の趣旨について控訴棄却の判決を求め、控訴の趣旨の訂正は不適法で許されない。仮に右の如き訂正が許されるものとすれば、訂正された控訴の趣旨についても、控訴棄却の判決を求める、と述べた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用および書証の認否はいずれも原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
(一) 控訴人〓野春義訴訟代理人は、亡〓野春光は昭和三一年八月二八日死亡し、その相続人は妻〓野たま、長女内藤〓〓子、次女内藤定子、三女松本ヲワ、長男〓野春義、二男〓野春政、三男〓野光春の七名であつたが、その内内藤〓〓子、内藤定子、松本ヲワ、〓野春政、〓野光春は、昭和三一年一一月二〇日名古屋家庭裁判所一宮支部に対して相続放棄を申述し、昭和四〇年一一月五日その旨の登記を経由し、被相続人の妻〓野たまも一旦相続した本件不動産に対する同人の持分を同年一一月五日放棄し、同年同月一〇日その旨の登記を経由した。したがつて、本件不動産は控訴人〓野春義の単独所有となつたものであるから、本件仮差押登記は違法であつて、抹消せらるべきものである、と述べた。
(二) 被控訴代理人は当審における控訴人〓野春義の主張事実を否認した。
(立証省略)
理由
当裁判所の判断によるも、控訴人らの請求は失当として棄却せらるべきものと考える。その理由は、左記の点を附加する外、原判決の説示するとおりであるから、その理由記載を引用する。
当審における控訴人〓野春義の主張する請求の趣旨の変更は、民事訴訟法第二三二条に照らし、許さるべきものと考える。そして同控訴人の当審における主張事実は、成立に争のない甲第二号証、第四号証により推認せられるけれども、被控訴人らが本件不動産に対して仮差押を執行したのは、昭和三九年一二月二二日であり、一方、控訴人〓野春義が本件不動産の所有権を単独で取得しその旨の登記を経由したのは、昭和四〇年一一月一〇日であることが成立に争のない甲第一号証、第二号証、第四号証を総合して明白である。それ故に控訴人〓野春義が単独で本件不動産の所有権を取得した事実をもつて、仮差押債権者である被控訴人らに対抗し得ないから、同控訴人の右主張も理由がない、
以上の次第ゆえ、右と結論を同じくした原判決は相当であつて、本件各控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条に則り主文のとおり判決する。